8、そして、癒しの世界へ
東京に戻ってきてから本が好きだった私の読むジャンルは“小説”から“健康療法”や“心理学”といった内容へ移行して、ますます本屋さんに入り浸った。不思議なもので健康になりたい!アンテナが立てられると、人からも情報が入ってくる。
あの頃の私は、まさに【藁をもつかむ思い】だった。健康だった今までは信じていなかったことや自分には関係ないと思って見向きもしなかったことに、健康という枠から外れてはじめて、真剣に向き合い、自分の為になるかもしれないと思うものには飛び込んで行った。
シンプルに、
1、自分の今の状態を知る
2、体の仕組みを知る
3、知識を否定せずに深めて
4、選択したものを体験する
これを繰り返した。
リフレクソロジー、整体、冷え取り靴下、半身浴、岩盤浴、食事療法、健康食品…地道に、こつこつ、自分と向き合っていたある日、ふと誰かに呼ばれたみたいに、とある本屋さんへ立ち寄った。そこで、ふと開いたページに「自然療法」「アロマテラピー」という言葉を見かけ、直感でピン!ときたその足で直ぐにアロマオイルを取り扱っているお店に行った。良い香りの店内に足を踏み入れる。リラックスする香りに包まれているのに、どう動けばいいのか分からない私は緊張しながら冷や汗をかきつつ、とりあえず、小瓶のテスターのキャップを開けて鼻を近づけてローズウッドをかいだ。
あの時の感動は今でも鮮明に思い出すことが出来る。
ゆっくり深く深呼吸をしながら香りが体内に入っていく。細胞ひとつひとつが緩んでいくみたいで力が抜けて初めて、「こんなに無駄な力を入れていたんだな」と気づき、「これは、良い方向へ変えてくれるかもしれない」という確信に近い感覚も強く生まれた。
植物のことは知れば知る程、その癒す才能にただただ驚いた。
出来る限りの時間とお金を投資してアロマオイルと本を買って、セルフマッサージから、お風呂やお掃除。当時は肌もかなり過敏になっていて、実家の犬猫たちとふれあうことも困難になっていたので、スキンケアも自分で作って…という、アロマ実験浸りの毎日だった。
時々奇妙な香りのブレンドを作ってみたり、お風呂に入れる量を間違えてピリピリしたりと失敗もしたけれど、とにかく毎日が楽しくなっていった。小さな瓶の中には、大自然の凝縮されたエネルギーがぎゅうぎゅうに詰まっている。植物たちは話せないけれど、力強く、ありのままの私の心と体を受け止めて癒し、気づきを与えてくれて、元気にしていってくれた。
回復の過程で、ふと、退屈だと思っていた実家での暮らしの記憶が甦った。
幼いころに裸足で畑の野菜を収穫したこと、菜の花畑の中でのおままごと、遠足でシロツメクサを繋げに繋げた長縄跳び、木登りをして夕日を見て、採りたての新鮮な野菜たちの生命力を日々の食卓で感じていたこと…そんな日々に、私は文句を言ってきた。
その瞬間瞬間に目の前で起きることの素晴らしさを無視して不満ばっかり言ってたことを振り返って、日々のこと、育った環境のこと、今生きていることに、感謝の気持ちでいっぱいになった。
自然の凝縮されたアロマに染まってくと、やさしく感謝する心が広がっていく。絡まっていた心が緩んでくると、さらに体も楽になって、ばらばらだった肉体と心がひとつに繋がっていく。“回復”という時間は、あらゆる部分が相乗効果でよい方向へ向かい、自分そのものが底上げされていった。
未熟なおおばかものの私は散々自分の体の声を無視して、病気になっても頑張る方向を大いに間違え、自分が積み重ねてつくった度重なるピンチに悲劇のヒロインぶったりなんかして、おいおい泣いたし、ひねくれて違う人生がいいなんて思ったこともあったけど、今は、自分の大切な体験を丸ごと受け入れることができ、懐かしい笑い話になっている。
ここまで書いてきて、改めて色んな記憶や感情を思い出したし、色々考えることが出来た。
どうして私が?何かが違ったら変わっていた?と考えたこともあったけど、【私に起きた経験から何を学んで、どう活かしてくべきなのか?】という問いを持ち続けながら、体、心や感情を癒す方法に導かれるように出合って、見聞きしたり経験をしてここまでやって来た。世界には沢山溢れるほど、人を癒してくれるもの、健康にしてくれるものが存在している。もしかしたら、そういうものの素晴らしさや与えてくれる感動を知る為に必要だったのかな、とも思う。
だからこそ私は、へなちょこで、おおばかものの自分の人生で経験した癒しを伝えていきたい。
仕事や家族、好きな人に、お店で会う人に。自分の手だったり、言葉だったり、笑顔だったり。どんな人にも、どんな手段でも。その為にも、私は今日もこれからも、成長し続けていきたい。自分の手から癒しがだだ洩れになるくらいに(笑)
さて!ここまで読んでいただいてありがとうございました♡
書くことを進めてくれた先輩にも、読んでくれた方、親や家族、恋人や友人達にも感謝しています。今、過去の私みたいに辛いひと、悪戦苦闘している人を側で支えているひとも沢山いると思います。たとえ暗闇の中にいる様な感じがしても、落ち着いてじっくりゆっくり見つめていたら、その人その人の目指す光はきっと見つかります。
私も、癒しの光を灯してお待ちしています!
得丸稚代